アクアリウムで「CO2の添加」といえば、高圧ボンベとレギュレーターを使用したシステムが常識ですが、結構費用がかかります。
あまり初期費用がかからずお手軽な二酸化炭素の発生方法として微生物の発酵を利用した二酸化炭素発生器があります。グロッソスティグマ救出作戦の一環として、二酸化炭素発生器を作ってみることにしました。
結構うまくCO2が発生していますよ。
発酵式CO2発生器
植物の光合成には水・光・CO2(二酸化炭素)が必要です。学校の理科でも学びましたよね。
グロッソスティグマも植物ですから光合成は欠かせませんし、もともと二酸化炭素を添加することが望ましいとされている水草です。でも、水中ですから水草が光合成をうまく行うためには大気中とは違った気遣いが必要なのだそうです。
ではどうするのかというと、水中のCO2の量を増やすために、エアレーションのような方法で二酸化炭素を水に溶かしてあげます。こうすることで、植物が光合成に必要なCO2を充分に吸収できるようになり生育が活発になります。
CO2を発生させる方法には色々ありますが、今回はあまり費用もかからず簡単にできる発酵式のCO2発生器を作ってみました。
発酵でCO2(二酸化炭素)?
その名の通り、微生物の発酵作用を利用してCO2を得ようという方法で、微生物にはイースト菌を使います。
イースト菌がエネルギーを得るために有機化合物を酸化して、アルコール・有機酸・CO2を生成することを発酵といいます。ここで発生したCO2を拝借して水槽に添加し、飼育水に溶かしてあげるのです。
CO2の発生原理などは知っている方が良いですが知らなくても困ることはないので、ここではスルーします。(本当は管理人のポン太も知らないんだ…(;^^)ヘ..)
CO2の発生原理
発酵式CO2添加で利用されるアルコール発酵の代表的な例は、以下の化学反応式で表されます。
C6H12O6 → 2 C2H5OH + 2 CO2
グルコース(C6H12O6)からエタノール(C2H5OH)と二酸化炭素(CO2)ができる反応を起こし、そこで生成される二酸化炭素を水槽に添加するというわけです。
AquaTurtlium:発酵式CO2添加装置の作り方-水草水槽のCO2ボンベ代用法より
しばらく日にちがたって発酵が進むと砂糖を使い切ったりアルコール濃度が高くなりすぎたりしてイースト菌が死んでしまうのだそうです。そうなったらリセットするしかないですね。
ペットボトルに残った汁は砂糖と水とエタノールだそうで、このアルコールはエタノールなので飲めるんですって。理論上は…。でも、イースト菌の死骸も混じっているし、やめておいた方が良いかも。
まぁ、原理はともかく簡単にできちゃうのですからいいじゃないですか。
CO2の添加とその効果は?
今回はグロッソスティグマのために設置するのですが、植物が光合成を行うための必須要素ですから添加した方が良いに決まってますよね。
アクアリウム界で流通している水草の中にもCO2を適切に添加しないとまともに育たない種も沢山ありますから、その効果の程がしれるというものです。
一度試してみて損はないでしょう。
発酵式CO2発生器の種類
発酵式ですからCO2発生の原理は皆同じですが、使用する素材によって3種類に分かれます。
重曹式
発酵させるためのエサとなる砂糖水に重曹を混ぜる方法。こうすると発酵が進む速度が遅くなり、長期間発酵を行わせることができるようになります。細く長くですね。
重曹の代わりに塩を使っても同じ効果が得られるそうです。塩式ですかね。
ゼリー式
ゼリーで砂糖水を固めることにより発酵をゆっくりと行わせる方法です。発酵が進むとゼリーが減っていきますのでゼリーを更新する時期が分かりやすいというメリットがありますが、一一ゼリーを作らなければならないというデメリットもあります。
寒天式
ゼリーの代わりに寒天を使う方法です。メリット・デメリットもゼリー式とほぼ同じです。
発酵式CO2発生器の作り方・簡単に作れます
ここでは、もっとも簡単・手間いらずというふれ込みで、重曹も、ゼリーも、寒天も使わない方法を紹介します。ただ、CO2は発生しますが、持続性はどの位あるかいまのところ未検証です。
用意するもの
- 空のペットボトル(炭酸飲料用で大きさは適当で良い。でも2リットルものは大きすぎるかもね。ここでは500ml用を使用しています)
- 氷砂糖たくさん(スーパーにホワイトリカー用等1kg入りの商品があったです。)
- イースト菌(スーパーのお菓子素材売り場などにあります)
- エアチューブ(必要量)
- つなぎ(チューブジョイント・熱帯魚屋さんやホームセンターにあるでしょう。ここではGEXのものを使いました)
- 割り箸(エアーストンの代用、ただでつけてもらうような粗末な割り箸の方が良い。木の密度が低く空気が良く通るから。手持ちのエアストーンでもOK。Co2用のエアストーンならベスト。細かい泡が出ますからね。)
- ぬるま湯(熱湯はダメ、40℃位が最適かな。水でも大丈夫)
- 逆流防止弁(あった方が良いけどなければ付けなくてもまぁ大丈夫)
長くアクアリウムをやっていれば手持ちであるようなものばかりですね。
あと瞬間接着剤(ゼリー状のものが良い。100均でも売っています)が必要です。
今回購入したものは
- 氷砂糖(108円)1回分で150g
- イースト菌(150円)
で、総額300円弱でした。
では、作りましょう
使用する道具類は、ドリルもしくはキリとカッターです。
小型の電動ドリルがあると加工が楽です。
発酵用ペットボトルの作成
作成と書いてありますが、加工するのはペットボトルの「フタ」です。
- ペットボトルのフタに穴を空けます。
真ん中が見てくれが良いですが、多少ずれていても実用上問題はありません。気楽に空けて下さい。穴径は、使用するホースジョイントの太さより少し細くなっていると密閉性が期待できるので望ましいです。「GEX つなぎ」の場合は5ミリ径でちょうど良かったです。
- 空けた穴に「GEX つなぎ(ホースジョイント)」を差し込み、瞬間接着剤で固定します。
瞬間接着剤はゼリー状のものが使い勝手が良いです。垂れないし、多めに盛り上げることもできます。エポキシ系の接着剤でも大丈夫だと思います。
ペットボトルの加工はこれだけです。ご苦労様でした。 - 割り箸をカッターなどを使いエアホースの内径より少し太くなるように丸く削ります。
手を切らないように注意です。まん丸でなくてもほぼ丸ならそれでOKです。
削り終えたら10㎜〜15㎜位の長さに切断します。(これがエアストーン代わりになりますが、エアストーンを使う方はここは飛ばしてください) - ペットボトル本体に氷砂糖を1/3位まで投げ込みます。
- ぬるま湯を適量(1/3〜1/2位)注ぎ込みます。
- ドライイーストを入れます。
ドライイーストはいくつかのメーカーより発売されているようです。スーパーなどで手に入るものを使用すればOKです。
今回は、共立食品が販売している顆粒状のドライイーストを使用しています。
使用量ですが、500mlペットボトルを使った今回の作例では一袋(3グラム)の半分を投入することで充分な働きをしてくれています。 - ペットボトルに加工済みのフタを取り付け、片側に割り箸を差し込んだエアホースのもう一方をフタに取り付けたホースジョイントに差し込みます。
エアホースは状況に合わせて長さを調整して下さいね。
逆流防止弁を使用する場合は、ホースの途中の都合の良い場所に取り付けて下さい。
(逆流防止弁は向きに注意!)
これで出来上がりです。ゼリーや寒天を溶かしたりする手間がないのであっという間にに完成します。\(^o^)/
今の季節(10月頃)で気温25度以上あれば30分も置いておけば、ペットボトルの中でイースト菌が盛んにCO2を作り始めます。
あとは、水槽環境にあわせてセットしてあげて下さい。
水深のある水槽ですと水圧に負けてでない可能性もあります。
下の写真は小型水槽にセットした例です。こんな感じであれば逆流防止弁もいりませんね。
発酵式CO2発生器のメリット・デメリット
非常に手軽にできる発酵式CO2発生器ですが、簡易式なのでよいところもあれば悪いところ、使いづらいところもあります。
メリット
簡単に自作できる
寒天やゼリーを使うにしてもしごく簡単に自作できるところは一番のメリットでしょうが。自作心も少しだけ満足できるかもしれませんね。
初期費用が極小
高圧ボンベを使った添加ですと、初期投資に5桁の費用がかかるでしょう。それに比べると数百円で済む発酵式は格安ですね。
デメリット
メリットに比べてデメリットは沢山あります。簡易式なのでしょうがないかも…。
Co2の添加量を加減できない
発酵式は化学反応を利用しているので、いわば「あなたまかせ」の方法ともいえるでしょう。周囲の気温等によってイースト菌の活動が左右されるので、CO2の発生量を人為的に一定に制御する事はまずできません。これが最大のデメリットとされています。
CO2の圧力が低い
発酵式では発生するCO2の圧力が低いので、今回のような水深の低い小型水槽では問題ありませんが、大型の深さがある水槽では水圧に負けてCO2がでないことも充分に考えられます。
これでは使用可能範囲が狭くなってしまいますね。
結構ニオイがする…かも
アルコールのニオイがもれる場合があるかもしれません。下戸の人など酔ってしまうかも…。
水槽水にアルコールが混ざる可能性がある。
発酵式では化学反応の結果ペットボトル内にアルコールが残留します。ボトルを振った時などに間違って水槽水にアルコールが混じったりすると、中の生体にとって非常に危険なので注意が必要です。
管理が面倒
発酵につれてペットボトル内の糖分を使い切ってしまった場合、最初からセットし直す必要があり管理が面倒です。
今回の方式では氷砂糖を追加すれば復活するかもしれません。確証はないけど…。
発酵式に価値はあるのか??
デメリットが沢山ある発酵式CO2発生器ですが、手軽にできるのであまり費用をかけず手っ取り早くCO2の添加を試したい場合などには価値のある方法ではないですかね。
一度試してみて効果が感じられれば、高圧ボンベを使ったシステムに移行すれば良いのではないでしょうか。何事も経験ですよね。
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